2019.11.15

須坂市井上保育園 : 園長 中島ひろみさん

井上保育園は須坂市の公立保育園で、信州型自然保育普及型の保育園です。森や山に囲まれているわけではありませんが、身近な地域に自然とのふれあいがたくさんあります。

① お勤めの園の特長や魅力について教えてください。

須坂市の西部、須坂・長野東インターを降りてすぐのところにあります。井上地区はりんご畑や田んぼが広がり、保育園からは北信五岳から日本アルプスに繋がる稜線が見渡せ、気持ちの良い景色を見ながら、生活しています。
信州型自然保育のフィールドとしては、一番身近なのは、お隣の井上小学校のグランドです。春の桜、夏は緑の木陰、秋は銀杏の実や葉、冬は築山のソリすべりと四季折々に魅力的な遊び場です。
井上地区は湧水にも恵まれていて、湧き出た水が川となって田畑の間を流れています。その中にはスギナモの川と呼んでいる清流があり、サワガニをとることもできます。スギナモに触れ、流れを見ているだけでも、色々な発見のある場所です。
20分ほど歩くと、ビオガーデンがあります。須坂水の会の方々が整備をしてくださっているビオトープです。小川が流れ、ザリガニを捕まえることが出来ます。花植えの手伝いやさつま芋掘りなどの体験もさせていただいています。体をいっぱい使って自然に親しんでいます。
今年は新たな取り組みとして、お家の方に信州型自然保育や日頃の保育を知ってもらう機会にしたいと、なかよし広場(参加型保育参観)を行いました。一緒に散歩に出かけ、子どもたちが自然と関わり、発見し、試行錯誤をする姿や友だちと共感し合う姿を見て、“喜々として遊ぶ姿が見られて嬉しかった”“こうやって育っていくのだと安心した”等の感想がありました。お家の方にもさらには地域の方にも発信していきたいと思っています。

②通っている子ども達の特長や成長の様子について感じることを教えてください。

園の周りは田んぼや畑が残っている地域と、インターチェンジがあり便利な地域のため、住宅地がどんどん増えている地域もあります。忙しくお仕事をされながらも、子どもたちに向き合って子育てをされている親御さんに見守られながら、伸び伸び、おおらかに生活しています。3歳以上児は自然保育のフィールドで生き物に触れたり、捕まえたり、不思議を発見したり、様々な体験をして、日々たくましくなっていることを感じます。3歳未満児も大きい子の飼育物を見たり触れたりして、お兄さんたちと手をつないでやがては行けるビオガーデンデビューに備えています。散歩や飼育物への興味は井上保育園の子どもたちを繋いでいるように思います。

③園の活動や子ども達の様子について、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

○5月ビオガーデンに散歩に行き、ザリガニやカエルを捕まえることに夢中になっていた子どもたち、池の葦の茂みにカエルを発見、隠れたり、見えたりなかなか子どもたちの近くにやってきません。池や葦をつついてみたり、声を掛けてみたり。誰からともなく、一人またひとり♪カエルの歌♪をうたい始め、5分10分…。すると、ケロケロとカエルの声がしてきました。顔を真っ赤にして、嬉しそうに歌う子どもたち。“カエルと合唱”のひとときでした。子どもたちの思いが通じたみたいです。
○園の畑で育てたじゃがいもを蒸かし芋にして食べるため、釜戸で火を焚きました。「これなにー?」と近寄ってくる子どもたち。「焼き芋のお家みたい。」(焚火のっていいたかったのでしょうね)可愛い会話をしながら、見ていました。その中に園長が焚き木をくべる手をじっと見ている目がありました。「Aちゃん、やりたいの?」「うん。」焚口に狙って枝を投げ入れますが、はずれてしまいます。他の子もやりたいというので、順番にやることになりました。Aちゃんは5回も後ろに並び挑戦し、カマドの奥に枝が届くようになりました。
満足そうな顔で炎を見つめていました。

④様々な体験活動を幼児期から積極的に取り入れる自然保育についてどう思われますか

自然保育の体験活動は前から須坂市で行われていた保育活動と変わらないと感じています。保育園の地域の自然の中に散歩に行き、遊び、自然物を使って遊ぶ、小動物を飼育する。
信州型自然保育の認定園になったことで、戸外で出会う自然との関わりをより大切に子どもたちに伝えられるようになりました。子どもたちが自分たちで発見し、遊びを広げ、試行錯誤する姿は、主体的な学びそのものだと感じています。

⑤今後、みなさんの園に入園される親子の皆さんへメッセージをお願いします。

子ども達は外で遊ぶことや自然の中で遊ぶことが大好きです。自然体験の楽しさを保育園からお家の方へ発信していきます。自然に触れることで見せる目の輝きをお家の方も、発見してほしいと思います。

⑥今後自然保育に取り組もうと考えている保育者の方へメッセージをお願いします。

 自然の中にいることの心地よさは子どもも保育士も同じ、自然物がおもちゃになり、物づくりの素材になったり、関わりのツールになったり、保育士としての発見や学びがたくさんあります。