2015.12.25
NPO法人 山の遊び舎はらぺこ : 小林 成親 さん
山の遊びはらぺこは、NPO法人として運営しています。
活動には「自然との関わりを中心にした生活」と「自主保育として母親と父親が運営をしている」という2つの特徴があります。11年前に、元々こちらの地域にいた何人かの母親たちが、「自然との関わりを子供と一緒に増やしていきたい」ということで活動がスタートしています。元々は別の場所で活動していたのですが、裏に森があり、裏に水路がある環境がよく、今の場所に引越してきました。建物は、築60年くらいのものです。
はらぺこは、経済的に厳しい面もあるので、足りないものはとにかく自分たちで作るというのが大鉄則です。それは作業であっても記念品であってもです。イスやテーブル、建物の床、草刈りや畑を耕すといったこと、すべて親御さんに関わっていただいています。
自然保育では、カリキュラムを押し付けるということがなく、それぞれのタイミングや感覚で成長していけることが魅力のひとつです。
例えば、木のぼりは3歳にはやらせないけど、4歳だったら全員やらせますというような感じではなく、個別にやりたい子がやればいいというスタンスです。当然できないことも多く、みんなジレンマを抱えます。お兄ちゃん、お姉ちゃんへの憧れもあって、何度もチャレンジする。そうやって自分で小さなハードルを積み上げていくと、ある時、できるタイミングがきます。そうゆう成長のきっかけが自然保育にはいっぱい転がっていて、その時その時に、子どもが自ら選んでいけるところがいいところです。
年齢の違う集団、もしくは体験や価値観が違う集団の中では、さまざまなものが生まれてきて、刺激を受け、ぶつかりあったり、融和したりします。人が育つということにおいて、これが大切なことのように思います。
散歩に行ったとき、川に鹿が流されていて、死んでいることがありました。それを見ると子どもたちは、「どうしちゃったんだろう」と思いを巡らせます。小鹿かな。角がないので女の子かな。水を飲みに来て足を滑らせちゃったかな。お父さんとお母さんはどうしたかな、とみんなで思いを巡らせています。これは尊いことで、命に対して向き合うことは、とても大切なことです。
恵まれた環境の中で、たくさんの命と出会うことで、子どもの心は揺れます。虫も花も、野菜も、森の動物も。それから仲間や大人たちといった豊かな出会いは、自然の中でこそ叶えられるものであり、人としてステップアップしていくのに必要なことだと思います。それが将来的に他者の命を思うことができたり、自分の命をなんとかしたいと思うことにつながるので、貴重な体験ができていると思います。
人がステップアップし成長していく過程で、自然との関わりは欠かすことができないと思っています。そのためはらぺこでは、季節を感じられる独自の時間軸を作れたらと思い、取り組んでいます。
例えば、子どもたちとよく行く山には、春になると鹿の角が落ちています。ですので、ハイキングに行って、鹿の角を拾ったら、3日後くらいに春が来たお祝いに「春祭り」をします。それから、よく行く散歩先に池があるのですが、そこが全面凍結してカチンカチンになったら、冬がはじまったということで「冬祭り」をしています。
カレンダーとか暦といったものとは違う、独自の季節感を感じられるのは、自然保育ならではで面白いと思っています。
はらぺこでは、親は保育士と一緒に、その日1日を過ごすという形で、実際に子どもたちと向き合い、保育士と同じように働いています。また給食がないので、「おかず当番」があり、当番制でおかずを作ってもてきてもらっています。
また自主保育ですから、園の運営など多岐に渡ることすべてを母親たちが係を決めてやっています。親も一緒に活動するので大変な面もありますが、本当に短い幼児期に、その姿をつぶさに見て、関われることを前向きに感じてもらえれば、非常に輝いた3年なり4年になるのではないかと思っています。
幼稚園さんも保育園さんも、自分達の実践を持ち寄って話し合うことで、子どもたちが自然と関わる時間が増えたり豊かになったりするといい気がします。
例えばコマやヤジロベエを作るためにドングリを拾うとき、それは物でしかありません。ドングリという物が落ちている。でも根が出たら、それは命になります。そうなると全然違う世界が広がるはずです。
保育に関わる多くの人がそういった感覚を持つことで、長野県の子供たちが、ちょっとハッピーになるといいと思います。