2015.12.25
森のようちえん ぴっぴ : 中澤 眞弓 さん
建物の中では過ごさない野外保育で、ぴっぴの森という2000坪の敷地で自由に遊んで時間を過ごします。ぴっぴハウスという8畳ぐらいの建物があり、寒い時におむつを替えたり、お熱が出た子どもが入ったりします。他にキッチンとトイレ、洗面所がある棟がありますが、後は全部タープです。2歳から5歳までの子供たちがいますが、入園は2歳児しかできません。
火・水・金曜日は2歳の子供たちが登園して、ひたすら遊びます。月・木曜日はアートプログラムや体育活動、お散歩などがあります。
田んぼを持っており、田植えの準備から草刈りを経て稲刈り、収穫感謝のお祭りをやります。6月にはぴっぴの森にテントを張ってお泊りをする会があり、お父様もいらっしゃいます。他にもキャンプに行ったり、クリスマス会をやったりと、さまざまな活動をしています。
森の中にいると、自然に抱かれているような心地よさがあります。そんな中では、「自分は自分でいいんだ」と思える感覚とか、自信を身につける子どもがたくさんいると感じます。自己肯定感を持ちやすくなるのです。
何もない中で、子どもたちはたくさんの人との関わりを繰り返しています。小さい子同士がトラブルになっていて、大人が止めに入ろうとしても、大きい子供たちが「僕が行ってあげるから」ということがあります。すると「どうしちゃったの?どうして叩いちゃったの?」「痛かったの?」と両方の通訳をしてあげて、最後には、2人がまた遊びたくなるような終わり方に持って行きます。それは決して上から目線ではないし、どっちかが悪いという結論を出すわけでもありません。本当にいい感じの最後を、上手に導き出していきます。そんな関わりができるのは、異年齢が自然の中で関わっているからだと思います。
真冬の寒い日、ある女の子の手が冷えて、涙を出しそうな状況でした。それを見た仲よしの女の子が「寒いの?」って言って、自分の手で包み、こすって、温めていました。大人だと、火にあたりなさいとか、手袋をしなさいといって状況を変えてあげることが多くなりがちです。でも自分の手をこすりあわせて、自分の体で温めてあげれば、相手の女の子は手だけではなく、心まで温かくなったはずです。子どもが自分のできることを一生懸命やる姿を見ていると、本当にすばらしいなと思います。
オモチャが何もない中で、子どもたち自身が自分で考え、工夫することで、気づいていくことがとても多いと思っています。子どもの中に秘めている力は本当にたくさんあり、それはどんな幼稚園に通っていても変わりはありません。でもたくさんの命で囲まれた場所で保育をしていると、子どもたちには毎日、たくさんの発見と気づきがあります。それが次の力になったり、お友達と協力してさまざまなことを乗り越えながら、新しいことを作り上げたりすることにつながります。
また普通の幼稚園だと、どんなにいいことをしても、時間制限や横とのつながりがあります。でもぴっぴでは、月曜と木曜以外は、ひたすらお昼まで遊べるようになっているので、とことん遊びこむことができます。この「遊んでいいんだ」という感覚は、子どもにとってとてもうれしいものではないかと思います。
お母さんたちによくお話をしていることなのですが、先を見て心配するよりも、「今、この子にとって何が必要なのか?」とか、「今、この子が大事にしたいことは何か?」を大切にしてほしいと思います。今を丁寧に育めれば、次は自然についてきます。森の中で自由に遊ぶことで、その時々に、必要な力がついてくるという考えを持っていただければと思います。
子どもたちが森の中で過ごす野外保育は、ただ遊ばせていればいいというものではなく、遊びの底にある育ちを理解しなければなりません。そのためには、大人側が力不足では、できないことが山ほどでてきます。野外保育は、「保育」です。だから質の高さを保たなければいけません。スタッフが子どもたちを理解したり、育ちを考えていくことに必要な学びを丁寧に行ってほしいと思います。