2015.12.25
NPO法人 山の遊び舎はらぺこ : 木下 真紀 さん
以前は神奈川に住んでいたのですが、実家が伊那市にあり、自宅出産のために帰省していました。その時、上の子が幼稚園に通う年齢になり、幼稚園探しをしました。偶然、はらぺこの写真展があり、子どもたちの笑顔や表情に主人が一目ぼれをして、入園を決めました。
神奈川とは環境が全然違い、子どもたちははらぺこが大好きなので、そのまま移住。最初は単身赴任だったのですが、その後転勤になり、今ではこちらに住んでいます。
上の子は虫を触れないし、見るのもイヤ。泥んこでも遊んだことはないし、芝生の上に裸足で立つのもすごく抵抗があるという感じだったのですが、何でも遊べるようになりました。そうなると楽しみが増えるし、遊具がなくても遊べるようになります。そうやって、見ることや耳、におい、味といったことを五感で感じて、心や体の中にしみ渡らせて、成長につなげていると思います。
春に年少さんで入ったお子さんは、森のお散歩をするときに、「もう歩けない。リュックも背負えない。もうやだ、お母さんのところに帰りたい」となります。でもだんだん歩けるようになってきて、秋にはしっかり歩くようになります。さらにその子が年長になった時には、他の小さい子の手を引っ張って歩くようになります。そうやって自然の中で、うれしい、悲しいといったいろいろなシーンを友だちと共有できることは素晴らしいですし、子ども達の成長を間近で見られることが、保護者同士の喜びにつながっています。
自然の中で大人が真剣に向き合うことで、子どもも必ず答えてくれるようになると感じています。子どもはちゃんと見ているし、話せば全部わかってくれます。一回でわからなくても、繰り返せばわかってくれると思います。森の恵みをいただいて、大人たちに囲まれて育つことが、きっと子どものいい育ちにつながっているし、力になってくれているんだと思っています。
例えば、月に一度の避難訓練の日があります。その日は2歳から5歳まで、みんなが先生の話を聞くのですが、ビックリするくらいよく聞いています。こちらが真剣に「ここは危ない」と伝えると、子どもたちは真摯に受け止めて聞きます。この集中力があれば、小学校に行っても立ち歩きのようなことはしないんじゃないかと思います。
上の子は通園中は毎日の遊びが好きだと言っていたのですが、小学校に入ってから「森が好き」と言うになりました。自然の中で過ごすことは、人間にとって、とても大切な五感をフル回転させて、さまざまなことを感じ、心にしみわたらせているのだと思います。その経験が成長する中で何かの壁にぶつかっても、また森に戻って「あっ、大丈夫」って思えるような、そんな力がつくと思います。