2018.03.22

野外保育森のいえ”ぽっち” : 元保護者 松本 奈津子さん

森のようちえんに通っていた保護者から~何があっても「この子は大丈夫」という、子どもを信頼する力をようちえんで得ることができました。

1 お子さんが通われていたやまほいく認定園を選んだ理由を教えてください。

どの園に通わせるか悩んでいた時にぽっちを知りました。信州の自然の豊かさにひかれて移住した私にとってぽっちは「ここだ!」と思える場でした。

遠くの屋根にとまる小さな鳥に気付き「とりがいるね」と教えてくれた当時3歳の息子のやわらかな心を大切にして下さる園なのでは…と初めて見学に行った日に感じたことを覚えています。

 

2 園に在籍した時のお子さまの様子や園での活動など(保護者仲間との関係も含めて)について、教えてください。

雨の中カッパ姿でビショビショになって大笑いしたり、そりに穴が開くほど滑り倒したり、馬乗りになって友達とけんかしたり…とにかく心と体を目一杯に使った三年間だったように思います。

そんな姿を間近で見て共に笑い、時に涙し、どろんこの洗濯物の大変さを語り合い… 私にとっても大切な仲間がたくさんできました。

 

3 園の活動や子ども達の様子について、印象的なエピソードがあれば教えてください。

年少の頃の話。ぽっちでは焚火でおやつを作る日があり、その日は棒パンを作る日でした。前日から生地をこね、自宅に持ち帰り布団に入れて抱いて眠ったりして発酵させ、次の日はそれを持って登園し焚火で焼いて食べるのですが、息子ともう一人の友達は他の遊びに夢中で生地をこねませんでした。自分達の今やりたい事を優先させた翌日、皆がいい香りをさせて棒パンを焼くのをただ見てる時、それを分けてくれる友達がいた時、二人は何を思ったのか…。そんな二人のために、後日もう一度棒パンの日を設けてくれました。勿論二人は生地をこね、抱いて眠り、翌日「my棒パン」をしっかり食べることができました。

この出来事は体験から学ぶことの意味と、それをするために必要な親(大人)のこどもを信じて待つ覚悟を教えてくれました。

 

4 現在、小学校に入学されたお子さまの様子について、教えてください。

入学当初はぽっちでの日々との違いに戸惑い、苦しさを感じている姿も見られましたが、三年経った今はその中で自分なりに折り合いをつけてやっていく術を身に付けたように感じます。それでも今もうまく自分を表現できず悔しい思いをする時もあるようですが、そんな時でも「自分は大丈夫」という揺るぎないものを持っているように見え、学校という場で本当に自信を持って過ごせる日がきっと来る!と信じて待っています。

 

5 「様々な体験活動を幼児期から積極的に取り入れる自然保育」についてどう思われますか。

幼い頃から本物の自然の中で育つこども達は,自分も自然の一部だという事を知っていて、その体と心いっぱいに自然の摂理を感じて生きているように思います。本物の自然の中で展開される活動には本物の喜びや感動、辛さや悔しさがあり、そういう体験こそがこども達の根っこを太く育て、その先の長い人生を支えてくれるのだと思います。そしてそういうこども達は「自分はこれがやりたい」「こう思う」と言える人に育っていくように思います。

 

6 最後に、今後、園に入園される親子のみなさんへメッセージをお願いします。

森のようちえんに通っていたこどもは小学校でルールを守って生活できるのかな…授業中座っていられるのかな…そんな心配をしていました。でも、自然の摂理の中でそれに合わせて生きてきたこども達は順応力が高く、何も心配なかったかなと今では思います。

確かに、森で過ごした日々とのギャップに戸惑い、こどもと一緒になって落ち込んでしまう日もありますが、それでも「この子は大丈夫」という思いが根底にあります。それはきっと本物の自然の中で大きく心揺らす姿を見てきたからで、こどもを「心配する」のではなく、「信頼する」力はぽっちでの三年間で私が得た一生物の力だと思っています。