2015年12月17日
- テーマ:
- 植物・生物
- 年 齢:
- 5歳児
- ねらい:
- 年長後半、この時期自然豊かな環境の中で、自ら発想を膨らまし、主体的に活動に取り組む
活動場所は幼稚園の自然体験の森(竹林、リンゴ、梅、柿の木などがあり、子どもたちが思う存分走り回れる野っ原)で行う。
子どもたちは日頃遊んでいる遊びを長期的にできることから、どんな遊びをして楽しもうか仲間と相談してから遊ぶ。
「基地を作ろう」
- 男の子の集団が竹林から竹を切り出してきた。
- 待っていた仲間と梅の木を柱に数本の竹を立て掛け、基地らしくなってきた。
「おんなの子の部屋」
- 男の子が作っている基地の隣では女の子が相談をして、野花を飾ったり段ボールを台にしてごっこ遊びがはじまった。
「この長さにしたいんだよ」「おさえててあげるね」どうやったら竹と竹をつなげられるか皆で思案中。
「ちょっと長すぎるよ」「オレ(・・)が切ってやる!まかせて」のこぎりを使う時は、アニキ気分なのか言葉使いもちがうね。
★子どもたちの様子
- 降園時間が近づくと男の子は(こうじちゅう)、女の子は(おんなのへや)と書いた看板を吊るしていた。
- 思い思いの活動をしている女の子の中で、一人“つる”を使ってリースを作っていたS子。
- 1日目は個の活動を楽しんでいるようにも見えたので、「かわいいリースができたね。何処かに飾れるといいね」と声をかけると「うん」とうれしそうに返事をしてくれた。
[2日目]
- 屋根は用意しておいた段ボールを見つけて利用。基地らしくなってきた。
- 女の子は余った段ボールを敷いて床に。靴を脱いでリラックスムード。
- 「基地の入り口はここがいいな」男の子たちは青竹の葉っぱの部分を入口に立て掛けた。
- 「Sちゃん、そのリース、ここの入口に飾っていい?」リーダーシップをとっていたUがS子に声をかけた。
- S子もびっくりしたようだったが、嬉しそうに「いいよ」と、返事をしてUに渡した。
- そばで聞いていた女の子の集団が口を出す。
- 「ええ!そこじゃなくて、こっちがよくない?」
- ああでもない、こうでもないと言っているうちに「私も作りたい!Sちゃん この木どこにあるの?」「連れてって」とせがんだ。
- 「いいよ 少し上の方だけどいい?」と笑顔で答えるS子。
- 女の子のパワーはすごい。目標がみつかると5,6人の子がS子を急がせて走っていった。
★保育者の視点(かかわり)
- 段ボールが欲しいと言われ明日用意をしておく約束をする。
- クギ、ノコギリ、ハサミなど置く場所を確認する必要がある。
- 明日からどんなふうに友達とかかわって行けるかな。
- Sちゃんリース持ってみんなの所へ行ってみないと誘う。
- 思いもよらずU君に声を掛けられて保育者もびっくり。
- 普段恥ずかしがり屋のSちゃんが大きな声で返事したので驚いた。
- みんなから褒められてはにかんだ様子をみせる。
- みんなに認められたSちゃんいい顔している。
※つるの状態で、大きいのを切ってやるのは保育者の役割。保育者も急がなくては!
「リース作りに挑戦」
★子どもたちの様子
- まず、つるの存在に子どもたちは戸惑う。
- 「なに~これ 切れないよ。先生切って!」
- S子が剪定ばさみを持って来て友達に両端を持たせて力を入れて切った。
- 「すごい!Sちゃん」「私のもおねがい」危なくないの?「先生、私も切ってみたい」「私はこわいからやめとく」
- 子どもたちは自分のやれることを判断して決めている。
- つるは結構クルクル巻き付いて、格好は悪いが何とか形になってきた。
- 「Sちゃん ありがとう ここに私たちの採ってきた花を飾ろう」
- 昨日採ってきた花をさそうと戻ったら、他の女の子がおままごとに使ってしまってなくなっていた。
- 「私たちが採ってきた花使わないでよ!」と言ってはみたが、花や実を採りに行く楽しみの方が大きかったようで、すんなりあきらめた。
- この時期、野山には赤や青、紫の実がいっぱい。本当にわくわくしながら、疲れを感じず山の奥まで入って行く子どもたちの姿の中に勿論 S子もいた。
★保育者の視点(かかわり)
- 扱いづらい物に子どもたちはどう対応していくだろうか。
- 初めて使う道具は危険もあるので、使い方をしっかり教える。
- 初めてなので細目のつるを切ってやる。
- しばらく子どもたちに任せて、他のグループの活動に行って、その後、様子を見に戻った。
※山の実は食べないように注意する。
※入ってはいけない所には赤いテープを張っておく。
- S子は手先が器用で創造力がとても優れているが、友達づきあいが少し苦手。そんな中、得意な能力を友達に認められることによって、満足感を得たり、自信につながったりする姿がみられた。
- 幼稚園で一番先にやる必要があることは何か。「自己主張をさせなければいけない」
この自己発揮が十分に受け入れられた時、子どもの表情も、動きも、言葉も輝いている。
S子が主人公になって遊びをリード出来た環境、自然の中だからこそ、早く発揮された。
- 遊べない子どもを遊ばせるには、ただ待っているのではなく、遊びたい心になるように私たち保育者が子どものあるがままを受け入れ、それを喜びとして受け止めることが大切だと思う。(子どもと先生との信頼関係)
- 幼児は自然の環境や人為的な環境からの影響を受けやすい。
幼児の発達にとってプラスになる環境をよく見極め、必要な経験、出会わせたい経験を考えすすめていくことが、保育の大切な役目と考える。
- 最近の子どもたちの様子を見ていると、自然の中での活動、さまざまな世代の人からの直接影響を受ける活動、人と人とのふれ合いの大切さや、物に直接取り組む経験などが非常に乏しいように思う。
その点自然の中での体験は、すべての子どもたちが刺激を受け、受け止められ、自分から行動を起こして、充実感や達成感・満足感などを味わうことが出来ると思う。