土 植物・生物 水 いろんな水(森のようちえんぴっぴ)

2015年12月24日

テーマ:
土/植物・生物/水
年 齢:
2歳児~5歳児
ねらい:
水と関わる

活動内容

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森のようちえんぴっぴの保育は、2つに大きく分けることができる。火・水・金曜日は2~5歳児までの保育の「ぴっぴの日」。月・木曜日は3~5歳児の保育の「おおきいくみの日」。「ぴっぴの日」には、特別なカリキュラムやプログラムはない。9時半頃から15分前後の朝の集まり、11時半からのランチ、13時40分からの帰りの集まり。この3つの時間が決まっているくらいで、その他の時間は、子どもたちは森の中でたっぷりとゆったりと過ごしている。一方で、「おおきいくみの日」には、森の中でたっぷり遊ぶと同時に、年間を通じて森と出会い、関わるプログラムに取り組んでいる。「木の赤ちゃんを探そう」「森の色さがし」「葉っぱのカルタ」「葉っぱの神経衰弱」「フィールドビンゴ」「森の福笑い」「森の中で料理」「木の実の標本箱づくり」「巣箱づくり」「巣箱の掃除」「冬芽探し」「雪の上の足跡探し」「落葉でお絵描き」「草木染」「アートの時間」「凧づくり」「手作り大型かるた」「木の実のおみせやさんごっこ」「リースづくり」…。これ以外に年間を通じて田んぼに出かけ、籾蒔き・苗床づくり、代掻き、田植え、草取り、稲刈り、脱穀、お餅つきと一連の仕事をしている。

午前もしくは午後2時間前後のたっぷりとした自由遊びの時間を軸としながらも、3歳児以上はその遊びをより彩り鮮やかにするためのスパイスとしての各種のプログラム。遊びを通じて森と出会い、関わり、親しくなる。そしてそれらの体験がプログラムを通して言語化、表現化されていく。大事なのはプログラムそのものではなく、その前後の豊かな遊びだ。

 今回紹介する事例は、あえてプログラムではなく「遊び」の中での様子とした。子どもたちは日々たくさんの「水」と出会い、関わりを持っている。水と触れ合っているそのこと、その時間こそが大切なのである。

●4月。入園したばかりの2歳児の咲子は、不安が拭えず泣いて過ごす日々をすごしていた。泣きながらも仲間の遊んでいる様子を目で追いながら、少しずつゆっくりぴっぴの生活にも慣れていった。ある日、咲子は外水道の所に1人でいた。背丈くらいの所から流れ出る水を手の平で受け、落ちてくる水の感触をずーっと味わっている。落ちた水が地面に跳ね返り、靴にも水がかかる。すると、足で水を受け靴にあたる水の感触も味わい始めた。しばらくそうしているうちに全身びしょ濡れ。保育者がその濡れっぷりに驚くと、いたずら顔でにんまり。着替えた後も、すぐ水道の所へ…。こんな水遊びを来る日も来る日も続け、安心した表情になっていった。夏には頭から水をかぶり始めた。そして、冬。バケツに水を汲みに行ったはずが、水道から出る冷たい水で、手袋を洗い始めた咲子。冷たいだろうに、清々しい笑顔。春に感じていた不安も、すっかり水で洗い流されたように感じた。

 

●新緑の5月。雨上がりのお散歩の時間。愛子(5歳児)「あ!モミジの赤ちゃんがいっぱい!」渚(5歳児)「サンショの赤ちゃんだ!」と見つけながら歩いている。4歳児の理香子、陽子、朔太郎が「見て、見て~!」「来て~!」と呼んでいる。アブラチャンの葉に陽があたり、たくさんの水滴がキラキラと光っている。理香子「これ、朝の絵本(「みずたまレンズ」、今森光彦、福音館書店、2008)とおんなじだよね」 陽子「おんなじ!」  近くで2歳児の慶太が「葉っぱはね、地面のほうにあるのとお空のほうにあるのとあって、お水が助けているんだよ。」と歩きながら話している。保育者「ほんとだね、地面にもお空にもいっぱいだ~!」 慶太は「そうでしょ!?」と笑顔を返してきた。

 

●田んぼへ代かきに出かけた5月のある朝、田んぼを見るなり行夫(5歳児)「こんなに水があって田植えできるの?水が多いね。」 宇一郎(5歳児)「田んぼの水が多いと植えるとき苗がもぐっちゃうね。」 昨年の田植えのことをよく覚えている。しばらく田んぼに水を入れずにいたが、場所によってなかなか水が引かない。困って大人が水路の出口を調節していると、泰介(5歳児)が「川みたいに流したら?」と、田んぼの泥に足で跡をつけて川を作り、水を流し始めた。そのうち、冬のソリを引っ張ってなにやら試していると思ったら、「博人(3歳児)を乗せて引っぱるともっと大きな川ができるよ!ほら道みたいに跡が付くでしょ。」と、水路の出口に向かって、何本もソリの跡をつけている。「俊輔(3歳児)を乗せてもあんまり跡がつかないんだけど、博人を乗せると跡がつくんだよ。」と体格のいい博人を乗せた方がしっかりと跡がつくことに気がつき、何度も行き来して、たくさんの水の通り道を作る。みるみるうちにその道を伝って水が出口へ流れ、田んぼ全体の水が引いていった。宇一郎「すげー!ぴっぴで作る川のでかいのみたい!」 先日、ぴっぴの森で土を掘って川を作り雨水を流して游んだ時の水の流れを思い出した様子。泰介「ほら、田んぼの水がなくなったでしょ。」行夫「ほんとだ!」宇一郎「すげー!」

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●12月の雨上がりのお散歩。5歳児の麗子、4歳児の彩里、夏希とドングリを探しながら歩いていたら、陽の光がさぁーと射してきて小さなモミジに付いた水滴がキラキラと光り出した。麗子「わぁー、なんてきれい!太陽が素敵に光らせてくれたわ!」と大感激。彩里と夏希は手に持っていたドングリの帽子に、枝に付いた雫をそーっと集め始めた。麗子も集め出し「私たちは水の妖精ね」 3人の水の妖精たちは一時間もずっとそーっと雫を集めていた。

 

●1月下旬、寒い朝。ぴっぴの森の一角にある水道。地面から60㎝ほど立ち上がったところに蛇口がある。昨日、蛇口をしっかりと閉め忘れたのだろう、一晩中かけてゆっくりゆっくり水滴がしたたり落ち、それがきれいな氷柱となっている。早めに登園した里佳子(3歳児)は、お母さんと離れがたかった様子で水道のそばで泣いている。氷柱にはまだ気がついていない。里佳子の泣き声が聞こえてやってきたのだろうか、泰弘(5歳児)がこっちに向かって歩いてくる。氷柱に気がついたようで、小走りしながら水道に近づいて来た。「あ!こんなところにでっかい鼻水がある!水道が鼻水垂らしてるー!」とニヤリとしながら泰弘。泣いていた里佳子が顔をあげ、「でっかい鼻水」を目を丸くして見つめる。くすっと笑い、里佳子は泰弘と笑顔で歩き始めた。

 

●雪が落ち葉の上にぱらぱらと音をたてて降っていた2月。2歳児の夏葉、遥樹、陽一がホオの葉の上に積もった雪を、手にサラサラーと乗せている。遥樹「お砂糖だ~!あっ、でもお砂糖は茶色だ!」夏葉は手袋を取って手のひらに乗せ、じわじわと溶けていくのをじーっと見ている。夏葉「あ、雨になった!なっちゃん、雨好き…」 遥樹「何で雨好きなの?水だから?」 夏葉「うん!」

 

●2月中旬。寒い日が続いているが、時々気温が上がる日もある。そうすると日中は雪が融けて水たまりになり、それが夜に凍って朝はきれいな氷ができている。その氷をシャベルで割りながら康人(3歳児)がつぶやく。「お水が冷たくなってツルツルになったんだよね。温かくなったらツルツルが水になるね。」 ゆっくりゆっくりではあるが、春は確かに近づいてきている。

子ども達のきづき

聞いたこと、見たこと、触れてみたこと、読んだこと、体験したこと、失敗したこと…。子どもたちがそういったことから学び、感じていることは、大人の想像をはるかに超えている。そして、その瞬間に発せられる子どもの感性の言葉、感覚の言葉はとても新鮮な響きと深みを持っている。一緒に楽しんだり、笑ったり、すごいねと言ってくれたりする仲間の存在は大きく、「夢中になれるもの」「仲間」「時間」があれば子どもたちの育ちははぐくまれやすい。

事例に対する保育者の思い

子どもたちが感じたり、考えたりしている時間を大切にしたい。その子どもたちを手助けする大人の言葉は、最小限に、丁寧に選びたい。森のようちえんぴっぴでは、このような思いを大切に保育をしています。

もりのようちえん ぴっぴ 森のようちえん ぴっぴ

園の形態 特化型
代表者氏名 代表理事 : 中澤 眞弓
運営法人 一般社団法人 森のようちえん ぴっぴ
運営法人代表者名 中澤 眞弓
園の設立日 2007.4.1
認定日 2015.10.13
区分 認可外保育施設
住所 〒389-0113 北佐久郡軽井沢町大字発地大原1061-31
エリア 東信
お問い合わせ先 MAIL : info@moripippi.jp
ホームページ https://moripippi.jp/
定員数 未満児 : 10人 3歳児 : 10人 4歳児 : 10人 5歳児 : 10人 6歳(学童)以上 : 0人
基本開所曜日 月,火,水,木,金
基本開所時間 9時〜14時
延長保育の有無
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