自然保育に欠かせないのが、山、森、林、川、田畑といった自然豊かなフィールドです。長野県は、日本で4番目の広大な県土を誇るだけでなく、その78%が森林という、まさに自然保育に最適な環境が整っています。日本の屋根ともいわれる標高3,000メートル級の山々やそこから流れ出る豊かな清流は、信州ならではの贅沢な自然との関わりを体感させてくれます。この環境に加え、長野県の村の数は日本最多。多様な地域性も特徴です。
自然保育は地域資源と密接に関係します。雄大な自然の中で、子ども達がふるさとのあたたかさを全身で感じながら成長できる自然保育の世界を紹介します。
ひと口に「土」といっても、砂の多いジャリジャリしたものや粘土質でべったりしたものなど、手触りはさまざまです。サラサラした土では泥団子を作れないのに、ベタベタしたものなら簡単にできる。「じゃぁ、水を混ぜればいいんじゃない?」と、さまざまな経験が柔軟な発想力を育てます。土を掘り進めるうちに出会う幼虫や小動物などは、新鮮な驚きと好奇心を育ててくれます。
また土を耕して食物を育てる活動を通じ、土が育む生命力を実感することもできます。信州では春になると硬くなった土を耕し、肥料を加えてフカフカのベッドのようにして種や苗を植えます。その成長を見届けながら、収穫の時期には新鮮な食材を自分たちで調理して食べることを通じて、本物の食育を肌感覚で体験できます。豊かな自然を大切にしてきた信州だからこそ、全てがリアルな体験につながります。
日本には四季があり、色とりどりの草花を季節ごとに目にすることができます。特に長野県は標高差があるので、季節のスピードが地域によって異なります。平地ではまだまだ緑の葉がある秋口でも、そこから見える山々は赤や黄色に変わっているという景色は、親子の会話を豊かに深めるでしょう。
また、子どもは遊びを見つける天才です。一見すると茶色いだけの晩秋の森から、真っ赤な木の実や可憐な花を見つけて「ママへのプレゼント」とかわいいお土産を真剣な表情で創ります。そうかと思えば枯れ枝を組み合わせ、みんなで協力し合って大きな作品に仕上げるなど、創意工夫をしながら物事を成し遂げることの大切さを身につけるチャンスを信州の森が演出します
子どもたちは水遊びも大好きです。清らかに流れる川に入り、楽しげに声を上げて遊びます。長野県には、諏訪湖をはじめとする湖や、千曲川や犀川、天竜川や木曽川などの水系に恵まれた地域でさまざまな体験ができますし、普段は楽しく遊んでいる川が、時には雨によって濁った水がごうごうと流れる様子に、テレビやインターネットでは体験できない臨場感を味わうこともできます。
農地が多いことから、多くの農業用水路があるのも特徴で、命にかかせない水の尊さを感じることもできるでしょう。ちょっとした気温の差で雨が雪に変わったり、その雪が春の訪れとともに融けて川に流れ落ちる様子を目の当たりにしながら、遊び方が変化していくのも信州の楽しさです。
見上げれば、山に囲まれた信州独特の空の広さと自然の雄大さを感じることができます。全国的にも平均日照時間が長い信州の太陽をたっぷりと浴びながら、のびのびと遊ぶ子どもの姿は周りの人も幸せにしてくれます。いろいろなカタチの雲や山々にかかるモヤから気象の変化を予測するなど、さまざまな空模様があることを体験するのも貴重です。屋外であそびながら「風のニオイがかわったから、もうすぐ雨が降るね」と気付くことのできる能力は、子どもの頃だからこそ身につくものです。
ギラギラとした夏の太陽も、森の中に入れば優しい木漏れ日となり、やわらかな日差しに変化します。そんな場所がたくさんあるのも、森林面積が広い信州ならでは。日本アルプスに代表される山々が広がる贅沢な風景を一緒に楽しみながら、自由活発な子どもの成長を見守ることができます。
村の数が日本一ということに象徴されるように、長野県には多様な地域性があり、それぞれの地域に伝統的な祭や行事があります。これはその地域に住む人々が、自然との関わりの長い歴史の中から生み出したもので、荒ぶる自然を沈めたり、恵みを共に喜んだり、生かされていることに感謝してきたのがルーツです。そうした地域の伝統行事などの体験を通じて、子どもたちも一生忘れることのない「心のふるさと」を持つことができるのです。
また、さまざまな地域の人と関わる機会が増えれば、子どもたちの成長を見守ってくれる大人も増えることになります。それがお年寄りの生きがいになったり、地域の活性化に直結したりと、希薄になりつつある「人と人とのつながり」の大切さを気付かせてくれます。